完備距離空間とは、
「任意のコーシー列が収束する距離空間」のことです。
「コーシー列が収束するのは当たり前じゃん」そう思うかもしれません。ですが、これは一般には成立しないのです。
コーシー列だけど収束しない数列や点列を
見つけることができます。
詳しく知りたい方はこちら↓を参照してくださいね。
「コーシー列ならば収束列は成り立つか?」
完備距離空間の定義と例を見ていこう。
その前に必要な知識は、次の3つ。
- 距離空間の定義
- コーシー列の定義
- 収束の定義
距離空間の定義はリンク先で確認してください。
コーシー列と収束列
コーシー列の定義
を距離空間とし、 を の点列とする。
が成立するとき、 はコーシー列であるという。
収束列の定義
を距離空間とする。 を の点列とし、 とする。
が成立するとき、 は に収束するという。
完備距離空間
完備距離空間の定義
を距離空間とする。
内の任意のコーシー列が において収束するとき、
を完備距離空間という。
冒頭で説明したように、一般の距離空間ではコーシー列は収束しないことがあります。しかし、完備距離空間では、コーシー列は必ず収束します。
完備距離空間の例
実数空間 は完備距離空間です。
これを示すには、 内の任意のコーシー列が収束することを述べる必要があります。
だけど、実はこれ、実数の公理の1つなんです。
[box class="glay_box"]連続性の公理:コーシー列は必ず収束し かつ アルキメデスの公理が成立する[/box]
だから、証明する必要がないんです。
「だけど、これの証明見たことあるよ?」
「いや、これを証明しろという宿題なんだが???」
という方もいるかもしれません。
そんなあなたには、証明があるんです。
どういうことか。
連続性の公理に何を採用しているかで、
証明のあるなしが決まります。
連続性の公理には同値なものが6つあります。
どんなものがあるか、簡単に書くと下記のようになります。
6つの連続性の公理は同値
公理1.コーシー列は収束、アルキメデスの公理
公理2.上に有界な空でない部分集合には上限が必ず存在する
公理3.デデキントの公理
公理4.単調有界数列は必ず収束する
公理5.カントールの区間縮小法、アルキメデスの公理
公理6. 有界な数列は収束する部分列をもつ
この6つはすべて同値です。だから、公理2~6のうちどれかを連続性の公理として、採用している場合、「コーシー列は収束する」は証明すべき命題となります。公理1を選んでいるときは、証明の必要はありません。
あなたが受けている講義や、読んでいる本ではどの公理で話が進んでいるか、確認してくださいね!
この6つの公理が同値であることの証明を理解すると、
実数に対する理解が深まります。
「論理的に理解したい」、
「できるだけ、行間を考えずに楽に理解したい」
という人には、「実数論講義」という本がオススメ。
突っ込みどころがないくらい、厳密に書かれています。
こちらを参考にしてください。
完備距離空間の話から、実数の連続性の話まで、さかのぼってしまいました。
寄り道をしたようで、寄り道をしていない。
寄り道をしたときに、理解が深まる。
数学にはそんな面白さがありますね!
今回は、以上です。
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