コーシー列で収束する部分列をもつならば収束列

「コーシー列ならば収束列」は成立しません。その証明とコーシー列の定義、部分列の定義を紹介します。

コーシー列ならば収束列?

前々回の記事の結論で、ノルム空間において「収束列はコーシー列」であることがわかった。

では、「コーシー列ならば収束列」は成り立つだろうか?という疑問は当然出てくる。

カイキくん
「収束列ならばコーシー列」が成り立ったけど、逆の命題「コーシー列ならば収束列」は成り立つのかな?

これは一般には成立しないことがわかっている。

カイキくん
そうなんだ!
スウガくん
反例を1つ見てみよう。

例えば、全体集合を(0, 1)とし、この中の数列a_n = \frac{1}{n}を考えてみる。

この数列は(0, 1)上で、確かにコーシー列であるが、収束列ではない。

スウガくん
誤解を恐れずに言うと、この数列\{a_n\}が収束列でない理由は、収束するはずの点 0 が全体集合(0, 1)に存在しないからだよ。
この\{a_n\}

\mathbb{R}上では収束するが、(0,1)上では収束しない。

このように、全体集合によって結論が変わることがあるので、全体集合がどんな集合であるかをきちんと確認することは大切である。

「コーシー列ならば収束列」は一般には成り立たないことがわかったが、条件を増やせば、収束列であるという結論を導き出すことができる。

「コーシー列でかつ収束する部分列をもつならば、収束列」である。

それではこの定理の証明を見ていこう。

必要な人は、次に必要な定義をいくつか挙げておくので参考にしてほしい。まずは、前回紹介したコーシー列の定義を確認しよう。

コーシー列の定義

コーシー列
(X,\|\cdot\|)をノルム空間とし、\{x_n\}_{n = 1}^{\infty}X 内の点列とする。
{}^{\forall} \epsilon > 0 , {}^{\exists}N \in \mathbb{N} ,{}^{s.t.}N \le n, m \Rightarrow \|x_n -x_m\| \le \epsilon
が成立するとき、\{x_n\}_{n = 1}^{\infty}コーシー列であるという。

次に部分列の定義を確認し、命題の証明に移ろう。

部分列の定義

部分列
(X,\|\cdot\|)をノルム空間とし、\{x_n\}_{n = 1}^{\infty}X 内の点列とする。
p:\mathbb{N} \to \mathbb{N}を、k,l \in \mathbb{N}, k < l ならば p(k) < p(l) を満たす写像とする。(つまり、順序を保つ写像とする、ということ。)
このとき、\{x_{p(k)}\}_{k = 1}^{\infty}を \{x_n\}_{n = 1}^{\infty}部分列であるという。

コーシー列で収束する部分列をもつならば、収束列

X をノルム空間,  \{x_n\}_{n = 1}^{\infty}X 内の点列とする。このとき、\{x_n\}_{n=1}^{\infty} がコーシー列でかつ収束する部分列\{x_{p(k)}\}_{k = 1}^{\infty}をもつならば、この点列 \{x_n\}_{n=1}^{\infty} は収束列である。

証明

(X,\|\cdot\|) をノルム空間とし、\{x_n\}X 内の点列でコーシー列とする。コーシー列の定義より、{}^{\forall}\epsilon > 0 に対して,

{}^{\exists}n_0 \in \mathbb{N} ,{}^{s.t.}n_0 \le n, m \Rightarrow \|x_n -x_m\| \le \frac{\epsilon}{2} .               (*)

仮定より、x_{p(k)} \to x (k \to \infty) となる部分列 \{x_{p(k)}\}_{k = 1}^{\infty}x \in X が存在する。

よって、{}^{\exists}k_0 \in \mathbb{N} ,{}^{s.t.}k_0 \le k \Rightarrow \|x -x_{p(k)}\| \le \frac{\epsilon}{2} .

m_0 = max\{ n_0, k_0 \} とおく。m_0 \le k ならば、

\|x - x_k\| \le \|x - x_{p(k)}\| + \| x_{p(k)} - x_k \|

\le \frac{\epsilon}{2} + \frac{\epsilon}{2} = \epsilon.

( k \le p(k) だから、m_0 \le k \Rightarrow n_0 \le p(k), k となり、(*)より \| x_{p(k)} - x_k \| \le \frac{\epsilon}{2}. )

以上より, x_k \to x (k \to \infty).

ゆえに、\{x_n\} は収束列である。 □