こんにちは! かいき です。
今回は、距離空間について、お話しします。
「大学で習ったけど、よくわからなかった」
「定義は分かったけど、例と証明をみせてほしい」
そんなあなたは必見です。
ぜひ、ここで理解していってください。
例と証明だけ早くみたい方は目次で、後半の方へ飛んでね!
まずは、定義を確認するよ。
距離空間とは?
定義
空でない集合Xの元x,yに対して、実数値d(x,y)が定義され, 次の条件
(M1),(M2),(M3)を満たすとき、dはX上の距離であるといい,
(X,d)を距離空間という。
(M1)任意の元x,y∈Xに対し、d(x,y)≧0で、「d(x,y)=0⇔x=y」.
(M2)任意の元x,y∈Xに対し、d(x,y)=d(y,x).
(M3)任意の元x,y,z∈Xに対し、d(x,y)≦d(x,z)+d(z,y).
定義を記憶することは大切です。
覚えていない状態で、勉強すると、
その定義が出てくるたびに戻り、確認することになります。
勉強の効率が悪くなるんですね。
だから、定義は記憶してから進むようにしましょう。
見ないで書けるようになるまで、何回も書くのがオススメです。
地道な作業ですが、意外に近道になります。
長いからといって、覚えるのを後回しにしないこと。
英語で?
英語でmetric spaceとかいて、メトリック スぺイスと読みます。
カイキくんのせいで間違えておぼえちゃった、、、とか言わないでくださいね(笑)
metricはそのまま距離という意味です。
metricには「メートル」という意味もあることを覚えておくといいですよ。「メートル」は長さの単位なので、意味を連想しやすくなります。
定義でこの3つの条件が選ばれた理由。 感覚的な理解
「私たちが普段、距離と言っているものにはどんな性質があるだろうか」という考えからスタートするといいです。
まずは、(M1)を考えます。
普段生活している感覚からは、距離はゼロ以上であるし、自分自身とは0です。
(M2)が条件から欠けていたら、どうなるでしょうか?
2つの点x,yの距離を測っているのに、d(x,y)とd(y,x)で値が違ってもよくなります。
イメージ的には、電柱xとyがあるまっすぐな道路で、
メジャーをもってxからyまで歩いて測るときと
yからxまで歩いて測るときで、値が違ってしまうという感じです。
どっちから測り始めても、同じ値であってほしいですよね。
(M3)が条件から欠けていたら、どうなるでしょうか?
3つの異なる地点A,B,Cがあるまっさらな土地で,
AからBに行きたいあなた。
このとき、最短で行くなら、ふつうA→Bとまっすぐ進ばよいはずです。
しかし、条件(M3)が欠けている場合、
1回CによってからBへ向かった方が短くなるように設定できます。
これはおかしいですよね。
まっすぐA→Bの経路がAからBへの最短のはずです。
以上のことから(M1),(M2),(M3)の3つを条件とすることは自然だわかりますね。
成り立ち
この定義の成り立ちを一緒に体験してみましょう!
まず、n個の実数の組をすべて集めた集合Rnにユークリッド距離dを定義します。
そして、このdの性質を調べると、
(M1)任意の点x,yに対してd(x,y)≧0で, 「d(x,y)=0⇔x=y」.
(M2)任意の点x,yに対し, d(x,y)=d(y,x).
(M3)任意の点x,y,zに対し,d(x,y)≦d(x,z)+d(z,y)
が出てくるのです!
そこで、逆に、この3つの性質を満たすものを距離と呼ぶことにしよう、ということになり定義が誕生しました。
具体的なものから、性質を抽出したんですね!
どんな議論ができるか?
- 近いとか遠いとかの議論を感覚的にではなく数学的にできる。
- 極限や収束、連続性の議論ができる。
初心者にオススメする例!3選
定義を確認できたら、次は例を見ていきましょう。
定義を見てすぐにその内容が分かる人はいいですが、一般的にそういった人は多くありません。
そんなときは、まず簡単な例を見てみることが大事です。
私自身、例を見て、定義への理解が深まるということはよくあります。
ここでは、初学者にオススメできる例を紹介します。
初学者がとっつきやすい例3つを用意しました。
例1.離散距離空間
1つ目はこれです。
空でない集合X上の任意の元x,yに対して、関数dを
x=yのとき、d(x,y)=0
x≠yのとき、d(x,y)=1
で定めたもの。
Xを具体的なものにして考えてみましょう。
X={a,b,c}とします。
これに離散距離をいれると、
1辺の長さが1の正三角形とみなせます。
「形」がないものに、「形」ができました。
これを、構造が入るといったりするよ。
おすすめポイント :「構造」を理解するのに便利。
また、四面体でも同様に考えることができるよ。
例2.ユークリッド空間
2つ目はこれ!
Rn上の任意の元x,yに対し、
x=(x1,x2,…,xn), y=(y1,.,y2,…,yn)とおく。
d(x,y)=√{|x1-y1|2+|x2-y2|2+…+|xn-yn|2}で定めたもの。
このdをユークリッド距離といいます。
おすすめポイント : イメージがしやすい。n=2 とおいて考えると平面をイメージできるため、勉強するとき図が書きやすい。
一般の議論のときでも、慣れるまではこの例を意識して図を描きながら勉強すると理解がすすみやすいです。
一般論は目に見えないものだから、最初のうちは理解しずらいときが多いよ。
けど、この例を活用して、目に見えるようにすると考えやすくなります。
そうやって、理解していくことがオススメです。
例3.[a,b]上実数値連続関数全体の集合 C[a,b]
これが3つ目です。C[a,b]を閉区間[a,b]上の実数値連続関数全体の集合とする。
f,g∈C[a,b]に対し,
d(f,g)=maxx∈[a,b]|f(x)-g(x)|
と定めたもの。
証明をするとき、「シュワルツの不等式」を使うので、そちらの記事も参考にしてください。
おすすめポイント : 関数空間として有名。要素が関数である例としてわかりやすい。
この例では、dをd(f,g)=maxx∈[a,b]|f(x) - g(x)|で定義しているけど、他の距離をいれることもできるよ。
距離空間上の開集合
開集合を定義できます。
メリット :
- 極限の議論ができるようになる。
- 連続性の議論ができるようになる。
開集合はいたるところで登場します。
閉集合や、極限、収束、連続、コンパクト性などの多くの概念で開集合の知識が
前提となって話が進んでいくんです。
高校までは習わない知識です。なので、はじめは慣れない考え方かもしれません。
でも、図を書いたり、例を見たりしてるうちに、だんだんイメージがつかめてきます。
少しずつ慣れていきましょう!
高校まで理系だった方は、極限や連続などの勉強をしていると思います。
開集合の知識を身につけるとまた違った見方ができるようになりますよ。
開集合の定義, 基本的な性質とその証明は別の記事で紹介しています。
距離から自然につくられる位相空間
開集合全体の集合が位相になります。
位相は位相構造ともいうよ。
コンパクト性
位相が考えられると、コンパクト性の議論もできるようになります。
コンパクトの定義と例は別記事で紹介しています。
基本的な証明方法を身につけたい方は、その証明を参考にしてみてください。
この分野の本はたくさん出ているのでぜひ本もチェックしてみてね。