「コーシー列ならば収束列」は成立しません。その証明とコーシー列の定義、部分列の定義を紹介します。
コーシー列ならば収束列?
前々回の記事の結論で、ノルム空間において「収束列はコーシー列」であることがわかった。
では、「コーシー列ならば収束列」は成り立つだろうか?という疑問は当然出てくる。
これは一般には成立しないことがわかっている。
例えば、全体集合をとし、この中の数列を考えてみる。
この数列は上で、確かにコーシー列であるが、収束列ではない。
上では収束するが、上では収束しない。
このように、全体集合によって結論が変わることがあるので、全体集合がどんな集合であるかをきちんと確認することは大切である。
「コーシー列ならば収束列」は一般には成り立たないことがわかったが、条件を増やせば、収束列であるという結論を導き出すことができる。
「コーシー列でかつ収束する部分列をもつならば、収束列」である。
それではこの定理の証明を見ていこう。
必要な人は、次に必要な定義をいくつか挙げておくので参考にしてほしい。まずは、前回紹介したコーシー列の定義を確認しよう。
コーシー列の定義
をノルム空間とし、 を 内の点列とする。
が成立するとき、 はコーシー列であるという。
次に部分列の定義を確認し、命題の証明に移ろう。
部分列の定義
をノルム空間とし、 を 内の点列とする。
ならば を満たす写像とする。(つまり、順序を保つ写像とする、ということ。)
このとき、を の部分列であるという。
コーシー列で収束する部分列をもつならば、収束列
をノルム空間, を 内の点列とする。このとき、 がコーシー列でかつ収束する部分列をもつならば、この点列 は収束列である。
証明
をノルム空間とし、 を 内の点列でコーシー列とする。コーシー列の定義より、 に対して,
. (*)
仮定より、 となる部分列 と が存在する。
よって、 .
とおく。 ならば、
.
( だから、 となり、(*)より )
以上より, .
ゆえに、 は収束列である。 □